訪問日

2023

04/19

「料理小松」春:稚鮎、スッポン雑炊、桜餅

今この瞬間だけ味わえる食材の味、刹那の美味しさを器の上に咲かせる小松大将の凄みを感じる春の回でした。
料理個々としても、コース全体としても、美学が置かれていて素晴らしいと思いました。

●稚鮎
ホコホコと温かい稚鮎の飯蒸しから幕開け。
蓋を外すと、まずはふわぁと湯気に乗って海苔の香りに鼻腔をこそがされます。稚鮎の香ばしさとまだ優しい苦味、空豆の青い風味と餅米の滋味が咀嚼するごとに広がる雅な一品。
この最初の一品で、すでに完全にやられてしまった。

●真鯛 お吸い物
真鯛は立派な個体だということが切り身からも伝わります。
吸地は真鯛に合わせて潮仕立てに。まろみのある塩気と奥行き、椀種との調和、余韻が素晴らしく、目を閉じて味わいに浸りました。胃から全身を駆け巡り、細胞が喜ぶような吸地。

●お造り ナメラ、春蘭 永樂和全
しなやかでやわらかな身は、水分量も完璧でうっとりする美味しさ。春蘭を添えて。

●お造り 鮪 北海道

●アカイカ、バイ貝、雲丹
大将が目の前でイカに細かく包丁を施して行く姿が美しくて、毎度釘付けになります。
この包丁の入れ方で、旨味と甘味が開きイカがご馳走に。刺身は料理。

●鯛 真子、白子
繊細な食材の単味を立てつつ素材力を発揮させてあり、和食のスピリットを感じる一品。
さわさわとほどける真子は舌触り繊細で、含ませたお出汁の雅な薄甘さがスッと寄り添う。

●あん肝

●蛤 玉締め
余熱で火が入ることを計算された蛤に、極めてデリケートな玉締めがスッと調和し蛤を包み込む。

●甘鯛、花山椒
焼き物は今回甘鯛で、短い旬の花山椒を添えて。香気と涼味がアクセントに。

●炊き合わせ 飯蛸、コシアブラ、筍
春の訪れが嬉しくなる炊き合わせ。個々が丁寧に調理されており、単体としても全体の調和もお見事。特にコシアブラの発色の美しさを見れば、技量の高さが読み解ける。

●スッポン雑炊
スッポンの旨味がスープに溶け合い、その旨味をお米が吸い込み、一口一口しみじみ美味しい。ゼラチンのソフトな食感も、咀嚼させることに一役買っており、美味しさを広げる。

●桜餅
コースの最後を満足感でいっぱいにしてくれるお菓子でした。
焼き立ての皮に温かい餡を挟んで、桜の葉で巻いて。湯気と共に桜とあんの風味が広がり、塩気とコクのある甘さが重なりとくとく広がる。

魯山人の器にも痺れました。

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