訪問日

2022

11/08

「料理小松」秋:香箱ガニ、天然茸の蓮根餅、無花果胡麻がけ

小松大将の美学を存分に感じた秋のコースでした。
夏から季節がガラッと変わり秋のど真ん中。食材も景色も日毎に移ろい、彩りを増していく今が最も面白い時期かもしれません。
この日のお軸は、一見季節感が分かりにくいですが、実は百人一首の小倉山で、「小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば いまひとたびの みゆきまたなむ」という秋の歌でした。店主が込めた思いを知ると、感動が広がり面白さが増すのが日本料理の素晴らしいところです。

今回とても印象的だったのは、天然茸の蓮根餅と無花果胡麻ソースです。

●香箱ガニ
色づき始めた紅葉をハラリとあしらった、香箱ガニのお料理からコースが始まり、気持ちも高揚(紅葉)。
カニ漁解禁後、初の香箱ガニを小松さんでいただけるなんて嬉しいことです。
カニ身に、外子・内子と酢飯を合わせて、軽くお酢のまろやかな酸味でまとめ上げています。外子のプチプチが食感に遊ぶ。

●カニ真薯 お吸い物
コース直前に厨房から聞こえてきた鰹節を削る音が、再び耳の奥から聞こえてくる気がしました。秀逸な吸地で、胃に納まってからの返り香も素晴らしい。細胞が美味しいと言っている。
端正で繊細なカニ真薯から、食べ進むごとに旨味が溶け出し、グラデーションを描きながら濃度が増す。

●アオリイカ、キャビア

●明石の鯛

●天然茸の蓮根餅
絶品でした。あるでお餅のように練り上げた、粘度がしっかりしたきめ細かい蓮根餅には、天然茸のヌメリとシバタケをあんにしたものをたっぷりとかけて。ワイルドな風味と複雑な旨味は、山と大地の秘められたパワーをグッと感じさせてくれました。

●無花果 胡麻がけ
秋に楽しみにしている一品。見た目も味わいも芸術的。
無花果に、滑らかでクリーミーな胡麻ソースをもったりとかけてあり、まるで白漆のようで恍惚と魅入ってしまいます。美しい。乳白色のソースに箸を入れると、赤紫の無花果がパッと顔を出して再び驚きがあります。
無花果の野生味と甘さに濃厚で品のある胡麻がマッチ。美しく完成された味わい。

●加能ガニ 茹 金石
金沢金石で揚がった加能ガニです。茹でたてのホコホコと温かいこの温度が一番美味しい。

●甘鯛 輪島

●蕪 菊あん、コロ柿
小松さんの根菜の煮物は秀逸です。蕪は繊維感が無くて口溶け良し。透明な出汁あんに浮かぶ黄色の菊がゆらゆら美しい。

●松茸 茶漬け

●栗きんとん
小松大将が使われているのは門前の栗。この栗が別格の美味しさなんです。口の中で甘さが広がり、三温糖のように深く優しいコクもある。粒感を残してあり、咀嚼するごとにまた栗の風味も広がります。器は初代の梅山。

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