訪問日

2019

08/01

「料理小松」夏:鰻の飯蒸し、鱧お吸い物、スッポン蓴菜

15000円のコースは、高級食材のインパクトだけに頼らない部分での工夫や、小松大将の腕の高さに凄みを感じました。

この日は凛と咲くテッセンの一輪挿しの濃紫(こきむらさき)が映えていました。折敷はこの時期にだけ出すという山中塗りの白漆が準備されていました。白といっても芝翫茶(しかんちゃ)寄りの香色(こういろ)で、この空間にマッチしています。

●梅ジュース
汗が吹き出すような猛暑日に、氷が入った梅ジュースでスタート。フウと胸を撫で下ろし、気持ちに落ち着きが出ました。

●鰻の飯蒸し
蓋を外すとツヤツヤ純白のご飯。飯は酢飯で、酸味が暑さを取り払ってくれました。中には鰻。

●お吸い物
まず心を持って行かれたのが、椀蓋見返しに咲くそれは見事な大輪の花火。これは小松さんの特注の輪島塗で、この季節にのみ出会える限定椀。パーン、パチパチパチと花火が上がった音が聞こえて来そうです。ずっと眺めていても飽きない美しさ。

葛打ちをした純白の鱧も美しい。出汁の奥深いおいしさがとくとくと余韻に残る。

●お造り
七尾の鮎魚女を軽い昆布締めにして焼き霜で。昆布締めがほんのりと心地よく、淡白な鮎魚女のおいしさを上手に持ち上げる。美味なり。土佐醤油、煎り酒で。

 

●珠洲の蓴菜
胴に「花の都 南禅寺」と書かれた永楽さんの京焼。蓋を外すとキラキラと輝く黄金色の出汁はスッポン。椀種は珠洲の蓴菜。珠洲のものは近年料理人さんの中で評判が良いらしいです。澄んだ蓴菜のまるの旨味がスッと一体になる。

●岩ガキ
羽咋柴垣の岩ガキ。岩ガキってこんなにもデリケートで趣のある味わいだったのかと教えてくれました。

●八寸
珉平焼には蛸のやわ煮。4時間煮込んであり、歯の少しの圧力でとろける柔らかさだ(個人的に鮮やかな珉平焼好きです)。
ギヤマンガラスには赤イカとこのわた。鱧の子のたまごとじは、高級スクランブルエッグ。

●甘鯛酒焼
お酒をかけながら焼いた甘鯛は、旨味でコーティングされていて美味でした。現代九谷で大変な注目を集める宮本雅夫さんの緑彩の器は、吸い込まれそうな美しさ。

●福井鯖江 吉川茄子
丸茄子の一種で伝統野菜のひとつ。こちらも近年料理人さんから注目を集めているそうですが、なるほど美味い。繊維がとてもきめ細かく、シルクの舌触り。

●鮎雑炊
聡明なお雑炊に鮎の香ばしさ。東北の夏カブラ、泉州の水ナス。

●葛切り
作りたての透明感、てろてろ乱反射して輝く葛切りをすくい上げる喜び。もっちり吸い付くような食感と、喉を滑る心地よさ。

満足感でいっぱいになった帰り道、足取りは軽かった。

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