食材が夏からガラリと秋へと移り変わります。気持ち高揚。お酒もひやおろしが出ていて、秋酒と共に堪能しました。
●前菜 そば豆腐
もっちりとしてそこはかとない滋味と品を感じるそば豆腐。秋のはじまりを感じさせてくれる菊花あんと旬のイクラで。蕎味櫂さんらしい最初の一皿。
●お造り 白カレイお造り
身はポン酢、肝はお醤油で。締まった身の弾力ともっちりを感じられるいい厚み。肝がとにかく美味しいのは新鮮だからこそ。
●お吸い物 スッポン
秋のお月様を思わせまる、まんまるのスッポン豆腐が鎮座する“丸椀”。やわらかい身とゼラチン質の部位がゴロゴロと入っており歯触りに存在感あり。スッポンの旨味が溶け合う、雑味なくまろみのあるお出汁も美味。
●八寸
見た目から丁寧なシゴトが伝わる八寸。
子持ち鮎煮びたしと金時、雲丹オクラたたき。煮穴子のそば寿司、才巻海老、ズイキ、銀杏は、柴栗の葉の上に盛り付けてさりげなく秋を添える。
そば寿司は、煮穴子の口どけの良さにしなやかなそばが調和。子持ち鮎は、甘すぎない絶妙な味の添え方が鮎の持ちを引き立てています。
●自家製カラスミのそば
昨年秋に仕込んだ自家製カラスミがけのおそば。カラスミは2年くらい経つと朽葉色になり、さらに赤みを帯びていき、5年もすると雀色に向かうのですが、これは10ヶ月ほどの若いもので透明感のある藤黄色が美しい。削ったカラスミがそばに絡まり、フレッシュで軽い塩味と旨味が極細切りのそばに合います。酒肴にもなる一品。
●そばがき
夏の新そばのそばがき。キタミツキという品種だそうです。青い風味と粒にみずみずしさも感じる風情のある味わい。
黄金色の出汁は、なんと鱧。クリアだが濃厚で、ずりしとした旨味が体に染み渡るよう。これがフレンチでいうところのソースの役割を果たし、口の中でグラデーションを描きながら一体になり味わいが完成。美味。
黒い粒は、野山に自生するウワミズザクラの実を塩漬けにしたもの(杏仁子)。杏仁に似た風味で、少し清涼感もあり、塩味もアクセントに。
●天婦羅 才巻海老
うまい。衣はカリカリというよりも、薄いけれどふわっとした感じ。海老の頭や足は香ばしく乾いた音がするが、身はほわほわとしており、海老味噌がソースのようにとろりと飛び出す。
●冷かけそば
極細打ちの外二そば、今回は冷やかけで。山葵の代わりに辛味大根で頂くのが櫂スタイルで、手繰ると喉が涼しくなる。おそばは凛としていて秀逸で、そば屋のプライドが無言で伝わる。
更科粉で入れたそば湯。
●ピオーネのゼリー寄せ
夏から秋への移り変わりにふさわしい、ピオーネを寄せたの涼やかなゼリー。白いソースは胡麻ソースで、軽いクリームチーズのようでした。