待合では、ドウダンツツジとツルウメモドキが迎えてくれました。
「すし屋は食材が”魚と米の2つだけ”だから、深く深く突き詰めるしかない」になるほど。本当に当たり前のことなのだけど、おすしって魚とお米だけの世界なんだということ、あまり気づくことではないですね。野菜も豆腐も肉もない、魚と米のみ。
食材のポテンシャルとシゴトが物を言う世界です。包丁は1mm以下、温度は2〜3度内という、極限まで突き詰た高い精度のシゴトと、生み出したオリジナルの美味しさ。舌の上でハッとする、別格とはこういうことなんだなという気づき。
今回特に驚きがあったのは、いくら。
この時期は地物ではなく北海道ですが、その別次元の味わいに吹き飛びました。「飛ぶぞ!」ってこういうことを言うんだなと(笑)本当にすごい。
通常、旬の生いくらの漬けって透き通ったルビー色で、口の中でピュッと薄皮が弾けてヒヤッとした温度感と共に美味しさが広がるのですが、山口大将のいくらは、まずほんのり白みがかった黄色をしていて、ほの温くて卵黄のようなのです。意表を突いた味わいに思考停止。ぽわっと旨味が横にも奥にも広がり、旨味で包まれるよう。極薄の皮膜の中に半熟の卵黄を閉じ込めている感じです。少しでも火を入れすぎると台無しになるので、この温度感はすごい。食べたことのない味でした。衝撃。海苔も、風味だけを余韻に残して口の中で消えるように溶けます。
この時期は、夏食材と冬食材の間で、”何もない時期”で職人泣かせなのですが、それでも試行錯誤されオリジナリティーを発揮し、満足度を最大値に持ってくるのがすごい。
2度出てくる食材がいくつかありましたが、(通常食材がかぶっていると「またか」となったりするのですが)完全に味で別の景色にしてあって、逆に発見がありました。
例えば、青バイ貝はお造りと蒸しで、シャクシャクとした食感とソフトな食感の対比。さらに、甲殻類を食べている青バイなので、蒸すと温度に乗って甘海老の風味がするんです。咀嚼するとまた甘海老感が強く出てくる。これは不思議。
あとは小肌の締め方。小肌って無意識に酸味に構えてしまいますが、もちろん締まっているのですが、酸味の優しい当たりと水分量の潤いが素晴らしい。
毎度ですが、最後の太巻きとメレンゲふわふわの玉も、このコースのラストを飾るのにふさわしく、コースの締めくくりを昇華させています。
(写真はモクズガニのみです。撮っている場合出なくて、味を記憶させたい一心で食べていました。お献立は下記に)
(お料理)
・ベニズワイ 新湊
・モクズガニ
・お造り アオリイカ熟成、青バイ貝
・青バイ貝 蒸(甘海老のニュアンス)
・なめこ 白山木滑
・鰻 白焼 三方五湖
(にぎり)
アオリイカ、白海老、雲丹シャリ混ぜ込み、いくら、甘海老、焼きカニ、小肌、のど黒、煮穴子、焼き鰻、太巻き、玉