訪問日

2022

01/24

「蕎味 櫂」冬:美川白子、毛蟹白味噌仕立てお吸い物、更科いちご大福

毎回良いのですが、なんだか今回はより一層櫂さんの真骨頂である“そば会席”という部分が格別に決まっていたなという印象。感動が大きかったです。

●そばがき
櫂さんのそばがきは秀逸。いつもとは少し違う配合で、温かくほちゃっとした食感に軽やかな滋味が重なる。今回は醤油のもろみの発酵のコクと、フキノトウの凛とした苦味を添えて。ちょうど七十二候で「款冬華(ふきのはなさく)」の時期でした。最初の一品で櫂さんの良さが心に刺さる。でもこれがほんの序章。

●美川白子
お餅のようにふっくら焼きあげた白子は香ばしくクリーミー。蕪すりながしと焼きネギ、そばの実と。姿勢が正されるような端正で美しい一品に嬉しくなります。

●赤貝、雲丹
赤貝と雲丹を土佐酢のゼリーがけで。赤貝は昆布のような豊かな旨味。丁寧の丁寧さが光る一品でもあり、赤貝ひもも綺麗に添えてありました。

●能登ぶり、紅芯大根

●お吸い物
赤がパッと鮮やかで美しく、一目で射抜かれた椿の輪島塗。
吸地は白味噌仕立てで、椀種は毛蟹。毛蟹の身は真薯というよりも、蟹身を寄せてある感じです。中には蟹味噌が入っており、グラデーションも楽しませます。こちらも丁寧で端正で、さらに驚きもある。

●八寸
あん肝 才巻エビ、能登もずく昆布締め鯛、鯖そば寿司、赤蕪、菜の花、合鴨ロース、花豆
何も言えない、整然たる八寸。素晴らしいです。

●自家製からすみそば
オイルでコーティングしたおそばに、自家製のからすみを削って。若めのからすみは可愛らしいひよこ色で、優しい塩味と旨味がおそばの個性に良いバランスで調和します。

●天麩羅 甘鯛鱗揚げ、独活
甘鯛は鱗揚げで、余熱でレア状態の絶妙な火入れ。香ばしくパリパリな鱗との食感の対比も美味。
独活は穂先を使用しており、その爽やかで妖艶な風味にふわっと持ち上げられます。

●おそば
このコースの流れで、最後の直球を外さずにど真ん中を決めてくるあたりがさすがだと思います。

●いちご大福
まんまるのいちご大福。作りたてというだけで心躍るのですが、お餅は求肥に更科を混ぜたもので、一呼吸置いてほんのりとそばの野趣が立ち上がり、櫂さんらしさを最後まで感じさせます。粒あんの滋味とも好相性。

紹介ページに戻る