訪問日

2019

12/06

「片折」冬:カニの回(8度目の訪問)

この季節の主役はカニ。昨年2018年のカニが素晴らしくて今年も楽しみに伺いました。もちろんカニが主役なのですが、それ以外の冬食材も今まで味わったことのない珠玉続きで、予想以上の回に。

お酒は、数馬酒造「NOTOプロトタイプ」。この酒は、石川県が開発した酒米68号を使って仕込んだ酒。金沢では片折さんでしか取り扱いがないはず。さらに手取川の大辛口を。

●すっぽんおかゆ
片折さんで最初に出してくれるおかゆ、まず最初に胃を撫でてくれるようで好きです。なんだか体が軽くなる。この時期はすっぽんのおかゆ。

●蕪と氷見あんこう お吸い物
あんこうは通常は独特のクセがありますが、これは全くくさみなくて味噌や醤油の味付けをしなくてもよい、凛としたあんこう。あんこうの無垢な味が黄金の出汁に寄り添う。面の広いあんこうを頬張る喜び。知らなかったこんなおいしいあんこうの味。

●氷見クエ

●能登島 迷いガツオ能登島
つやっと輝く断面に、まずは間違いない美味しさを宣言されているよう。

香ばしい皮目の薄いパリっとした食感を感じてからの、とろけるような身の柔らかさ。サーモンのミキュイのような口どけ。さらに皮目と身の間のゼラチン質が溶けて口の中でじゅわっとなる。目尻の下がる美味しさ。

●あん肝
酒蒸しにしただけというあん肝。ムースのように軽く美味。

●氷見 海鰻
年に1度あがるかどうかという海鰻を幸運にもこの日引き寄せる。よく知っている身のふわっとした鰻の食感とは全然違う、野生的と言える弾力のある噛みごたえ。この妙味。印象に残る。

●越前蟹
さぁさぁ主役のカニが登場。その日の最高のものを準備してくれるのが片折さんらしく、石川県の加能ガニだと水槽しかいないタイミングだったそうで、それは立派な活「越前蟹」を準備してくれました。食い入るように見る興奮気味の私。今年もカニ解禁日から既にたくさんカニを金沢で食べましたが、これは間違いなくナンバーワン。

暴れまくる元気なカニを、片折さんが鮮やかな手つきで目の前で捌いてくれます。元気すぎて自ら、ブランド証明の黄色いタグも切ってしまうくらい凶暴らしく、予測不能のハサミの動きが怖いくらい。片折さんは嬉しい表情と真剣な表情を交互にのぞかせます。

まずは焼きガニにて。殻のまま焼くことで蒸し焼きのようにし、絶妙な火入れで、まるで艶やかなシルクのような身。みずみずしく、てろんと舌に滑り込んでくる。一呼吸おいて立ち上がる甘さと潮騒。絶品だ。

●ふろふき大根
煮含めなどにせずとも今はお大根のいい季節なので、できるだけシンプルが一番とふろふきで、柚味噌をのせて。繊維もきめ細かい。

●カニ味噌ディップで
カニ味噌を入れた甲羅を炭火にかけ、ふつふつと温まったところで、蟹の爪と蟹足をソースのようにディップ。先ほどのシンプルな美味しさに奥行きが増します。思わず天を仰ぐ。

●里芋田舎煮
今回は金沢無農薬農家MEGLIY(めぐりー)さんの里芋で。ニボシをベースに炊いていて、いい香りがします。
日本人なら誰しも懐かしみをおぼえるお馴染みの料理を、片折さんが秀逸に仕上げることで、日本人のアイデンティティを再確認し誇りを持たせてくれる。矢口永寿さんお弟子さんの器で。

●お食事
今回は4つの顔で楽しませてくれました。まずは銀シャリで。お米は氷見のコシヒカリ一等米。卵は、かほく市西山愛鶏園さんのもみじたまご。

お次は、ほぐした越前蟹をのせたカニ飯で。中にカニ味噌を忍ばせてあるのがニクい演出。

お次は、なんと鯖寿司。氷見で今朝あがったばかりだという鯖は、その鯖のフレッシュな美味しさが活きている。海苔の部分を持ってふた口で。

さらに香箱ガニご飯。ズワイガニのメスである香箱ガニは、外子の食感と内子の美味しさが混ざり合い、満腹でも入ってしまう。しかもおかわり。

●葛焼き 湯涌の柚子
最後の一品。焼きたての葛焼きは手で掴んで。きつね色に焦げる表面は見るからに香ばしくてそそられる。はふはふと言いながら口にする喜び。柚餅子のようなコク、湯気とともにふわっと軽く持ち上がる。今日も片折さんは最後まで手抜きなしの全力だった。

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