訪問日

2019

03/23

「片折」春:イサザ粥、クチコ椀、能登ふぐ(4度目の訪問)

●イサザがゆ
まずはピチピチとグラスの中で跳ねる活イサザが調理台に準備されていたので、(能登生まれの私は)春の風物詩に「あぁこの季節か」としみじみ。これをサッと釜揚げにして氷見のコシヒカリ一等米のおかゆにのせて“イサザがゆ”として。ぷっくりつるっとした舌触りが実に美味。小さい身が全身で春を教えてくれた。淡い妙味で幕開け。

●クチコ椀
ナマコから出したばかりのてろてろの艶っとしたクチコ(卵巣)が大椀にたぷたぷと準備されているのがまず最初の驚きだった。これを目の前で(フライパンで)焼いて、さらにそれがお椀として提供されると言う予想外な流れにも驚き。
七尾はナマコの産地として有名だが、あんなにたっぷりの生クチコは料理店では出会えるものではないし、加工場では干クチコに加工すること前提なので塩を当てるけど、これは生のまま(かなりの値がついている三角形の干クチコをご存知のことと思う)。椀蓋を外すと出汁の中にたゆたう焼クチコ団子に心踊る。それは口の中でほわほわとほどけ、出汁のまろみと完全に一体となる。ほのかに感じる潮騒と苦味。豪快だが極めて繊細な一品。

●能登トラフグ
フグだとは思えないどデカさのフグ、しかもトラフグの登場。5キロはあるらしく、視界から無視できない存在感。能登は天然フグの漁獲量が実は日本一だが、魚種が多くて、例えばマフグやゴマフグなど8種類ほどがメインで獲れる。トラフグは珍しい。しかもこんな立派なトラフグを仕入れられるのはすごい。漁師さんとの信頼の高さを伺わせる。

 

刺身にするときはメスのほうが向いているらしく、これはメス。うらごしした白子をソースのようにかけてあり純白で眩しい。3日寝かせて旨味がMAX値で食感も良い。

●七尾ボタンエビ
こちらも立派なボタンエビ。春蘭を添えて。添え物まで手を抜かない、綺麗で惚れ惚れする仕事。

●あん肝
低温蒸しにしたアンコウの肝が、これまたがドーン!と登場し、おおおお!となったが、提供されるのは一番おいしい限られた一部だけ。まずはみずみずしく美しい珊瑚色にうっとり。食感はやわらかいを通り越して、スッと消えるような軽さに驚き。“夢”みたいな味だった。

●青バイ貝
氷見の青バイ貝は通称“薄バイ貝”とも呼ばれるそうで、とにかくサイズが大きく、そして殻がとても薄い。手でクシャっと割れるくらい薄いのは、金沢のバイ貝とは全然違いますね。身はうすく引いてあり、甘さがほとばしる。
添え物の壬生菜は胡麻和えで。胡麻は目の前で炒って擦ってくれたので、食べる前から香ばしさが舞う。

●若芽、アワビ
椀蓋を外すと潮騒に鼻孔をくすぐられた。若芽に覆われているのはアワビ。かなり立派なアワビで、目尻が下がるようなやわらかい食感に驚きました。アワビを覆っていた若芽のシャクシャクとした食感が良いアクセント。

●ホタルイカ
朝どれのホタルイカを、泳ぐように器に盛り付けて。そのホタルイカの目と口を手際よく目の前で取り始める大将。足が早いホタルイカは事前に下ごしらえすると痛みが早いことからこのようにしてくれます。それを出汁にくぐらせると、ぽんぽんに。ぷっくりなったホタルイカは口に入れるとぴゅっと中からエキスがこぼれる。

●焼きフグ
冒頭から漬けにしてあったフグの切り身。こちらはオス。目の前で炭火で焼いてくれました。焼きフグは焼き過ぎると鶏肉のようになってしまうので、火入れが命。目を光らせる大将。中が均一にみずみずしい最高の焼き加減。
添えてくれたヒレ酒がまたうまいこと。ヒレの焼き方が均等でムラがないのが良いんだろうなぁ。

●七尾鱒
お料理最後は七尾の鱒の揚げたものにカブラのみぞれがけ。焼いた蕗の薹を添えて。カブラは片折さんがご贔屓にされている金沢市安原の荒川さんのカブラ。これは本当に絶品だ(後記)。立派なカブラをお弟子さんがすり下ろします。甘く香り高く美味。

●お食事
信楽焼 中川一辺陶さんの御飯鍋で炊かれた、氷見コシヒカリ一等米の艶。一杯目はシンプルに銀シャリで、二杯目おかわりは梅茶漬けで。お味噌汁はボタンエビの頭入りで良い出汁が出ていました。

 

 

●いちご大福
水菓子は作りたてのいちご大福。隠しきれない立派ないちごにそそられます。なんだか雪山のようないちご大福。求肥の上の方にはこしあん、イチゴの高い糖度にマッチ。絶品。

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