訪問日

2022

11/18

「御料理 ふじ居」秋冬:甲羅醤油漬け、ズワイガニ、鰤

移転後13回目の訪問。楽しみにしていた甲箱蟹醤油漬けの季節です。
過去訪問した同じ季節を見返してみても、プレゼンをガラリと変えてあったりと、毎度試行錯誤されているのだなぁとリスペクトしかありません。
今回は、蟹(香箱ガニとズワイガニ)・鰤・松茸が重なる貴重なタイミング。
この時期は王様食材がどんどん出てきて、見た目だけでも圧倒されるのですが、逆にその素材を想定していた以上に美味しく食べさせて、一線を超えたところに感動を置くのは難しい時期です。珠玉食材をポテンシャル以上に昇華させられるのは限られた料理人だけ。その1人が藤井大将だと思います。
ふじ居さん冬の定番、スペシャリテの”甲箱蟹醤油漬け”は、何日もその美味しさに浸れる圧倒的美味しさでした。今年も食べられて良かった。
ズワイガニは目の前で固体を捌いてくれて、お刺身、炭火焼き、しゃぶしゃぶの流れでした。

●八寸
ふじ居さんで冒頭に八寸が来るのは初めてでした。卓上が秋の景色で彩られ、弾んだ気持ちでスタート。
洋梨と生ハム、松風、八尾の高野さんの最中 柿ピュレ、しめじ 菊花 とんぶり 大和芋、生麩カマンベール、じゃこエノキ、いくら 七尾
器は、八尾のShimoo Designさんの作品。

●蕪 蟹しんじょう
藤井大将の吸地が胃に入ってくると、毒が抜けたように体が軽くなるんですよね。お吸い物は大将そのものを映す鏡のようなもの。心を込めて引いた出汁は、心洗われるような美味しさです。
スッと立った風味ととくとくと広がるまろみが、舌にとろんと滑り込んでくるような繊細なカニしんじょうに溶け合います。

●ズワイガニ 刺身
ここからは蟹を個体から捌いての圧巻の実演開始。まずは、活から捌いたからこそ最上の刺身から。みずみずしい甘さにうっとり。

●鰤 お造り(トロ、中トロ、砂ずり)
新湊で揚った10キロアップの鰤を3部位食べ比べさせてくれました。
熟成ではなく、ここに来てこそ食べられるフレッシュなブリの最上の美味しさを教えてもらいました。パンパンに張った砂ずりのサクサクとした歯ごたえと、フレッシュながらしっかり感じる旨さ。

●甲箱蟹 醤油漬け
ふじ居さんのお献立では毎年“甲箱””と書かれているメスのズワイガニ(金沢では香箱ガニ)の醤油漬けです。
ケジャンのように醤油などの調味料で漬け込んだもので、この時期ふじ居さんを訪れる最大の楽しみ。
味付けのバランスが絶妙で、素材の輪郭をハッキリと出しつつ品のあるおいしさ。ケジャンとは違う、和の美味しさに仕上げているあたりも大将の素晴らしさ。にぼしがほんのり効いていて、その風味がスッと味わいに溶け込んでいる。



炊きたての銀シャリを少し頂きながら。コース中盤で炊きたての土鍋炊きご飯が準備されるという、この手間も有難い。このご飯がまた素晴らしく、お米が立っていて輝いていました。


酒泥棒でありご飯泥棒でもある、ふじ居さんの冬の逸品。食べた後は何日もおいしさの余韻に浸ってしまう、記憶に残る一品。

●珠洲松茸 味噌漬け
箸休めとして。味噌漬けすることによって香りもグッと増し、シャクシャクした歯ごたえを感じるたびに能登松茸らしいニッキ様の風味が広がります。何気なく出してくれましたが絶品。

●ズワイガニ 炭火焼き
藤井大将が手際よく捌き、あっという間に美しく盛り付けられ圧巻です。


炭火焼きは焼き方に特徴あり。水分を含ませた富山産和紙を蟹にかぶせて、さらに追い水を吹きかけて湿らせて焼き上げます。こうすることによって、蒸し焼き状態になり、身から水分が抜けずに、ふっくら仕上がります。
炭火焼きの香ばしさと蒸し焼きの良いとこどり。

●鰤カマ
鰤もお刺身の次は炭火焼きで。表面を香ばしく焼き上げ、中はほわほわと口溶け良い。

●蟹しゃぶ
しゃぶしゃぶは、身もうまいがエキスが凝縮したスープも美味。しゃぶしゃぶは生と焼きの良いとこどりで、温かでとぅるとぅるの舌触り。ふわぁっと繊細な口溶けです。

お次は蟹味噌をたっぷりと絡めて。程よい塩味と優しいコクを持つ蟹味噌が、しゃぶしゃぶしたカニ身をふわっと包み込みます。

●柿なます
紅白なますに福光のあんぽ柿、胡麻醤油で。お食事前の酢の物ですが、怒涛の王様食材の流れに、良い箸休めにもなりました。こういう一品にも、細部まで手を抜かない大将の丁寧さが感じられました。

●吹き寄せ飯
さつまいものイチョウ、にんじんのもみじしめじ、ムカゴ、銀杏、蓋を外すと目に飛び込んでくる秋の景色。

●プラチナアイス
デザートの定番、スペシャリテです。満寿泉の純米大吟醸プラチナの酒粕を使った芳醇な味わいのアイス。

●炉の火
能登大納言、きんときにんじん
炉開きの季節、炭に種火が灯る景色を表現したお菓子で、海老芋あんに能登大納言、金時人参で火を表現しています。
海老芋あんのなめらかなな口当たりと儚い口どけ、滋味と自然の甘さ。このコースを昇華させるのにふさわしいお菓子。

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