訪問日

2020

03/19

「御料理 ふじ居」春:クチコ、ホタルイカ、熊そぼろ丼

前回から約2ヶ月後の訪問。ガラリと食材が代わりホタルイカの季節。料理のおいしさや器の素晴らしさはもちろん、お献立構成、プレゼンテーション力が高く感動がありました。ちなみにお献立は八尾の和紙に書いてあります。

●半生 干クチコ
艶っとした黄丹色の干クチコに最初から気持ちの高ぶりが抑えられません。通常の干クチコは天日で干物にするためアタリメのような食感で、旨味が凝縮され醇酒系の酒にぴったり。能登の代表高級珍味。これは“干し”と言っても半生で、見るからにみずみずしく重量感あり思わず食指が動きました。

炭火で少し温めて。歯が快感に喜ぶような厚みのあるソフトな弾力と、優しい塩味、温度と共に広がる旨味。絶品。ふきの苦味が引き締めるのもまた素晴らしい。
桃のお節句3月らしい菱形の黄交趾は、クチコと同系色ではあるが盛り栄えがします。

●お吸い物 薄豆豆腐
えんどう豆と吉野葛を練って作った薄豆豆腐は、春を感じさせる若草色。岩瀬のふきのとうを添える。雅な薄甘さと苦味、趣ある妙味が口の中にこだまします。

●七尾アイナメ 湯霜造り
器は9代大樋長左衛門の合わせ蛤。

●岩瀬黒ムツしゃぶしゃぶ
脂の乗った黒ムツはしゃぶしゃぶで。器は高取焼。

●五箇山豆富の田楽 木の芽味噌

●ホタルイカ炭火焼
今年は豊漁のホタルイカ、活で準備してくれました。さらに、調理前に活ホタルイカが光るところを見せてくれました。店内とお庭のライトを落とすと、少しではありますがホタルイカが幻想的な青碧に発光します。

このホタルイカの目と口を取り炭火焼に。炭火焼は2段階で食べ比べ。まずはさっと焼きで。2度目はしっかりめに。しっかりめに焼くと身と肝の食感の差が大きくなるので、肝が飛び出す時のじゅわっと感が増します。いずれもうまいが、なるほどの対比。

●ホタルイカ沖漬け
藤井大将が四方の船上で、獲れたてのホタルイカを沖漬けにしたもの。品のある沖漬けで、味の入りも良く美味。

●岩瀬あん肝 煮付け
いつも食べているあん肝とはまた別の美味しさを教えてくれました。なんと煮付けで。

蒸してポン酢ではなく、強い火力で一気に煮付けたあん肝。今日獲れたばかりの新鮮なものだからこそ火力に耐えられるのです。味付けの香ばしさと甘さにも負けない、全てが一体となり調和するあん肝。素晴らしい。

●八寸
後半の見せ場である華やかな八寸は季節を表すジオラマ。八尾「下尾デザイン」さんの、一枚板から丁寧に削った木の器で。滑川ホタルイカ酢味噌、七尾イイダコ、引千切の器には桃に見立てた生麩、すり身カステラ、ジャコセロリ、スモークサーモンの黄身寿司、八尾高野の最中にふきのとう味噌。

●岩瀬のど黒 木の芽焼き
黒ムツしゃぶしゃぶのお次は炭火焼のど黒。たぷたぷと美味しい脂が波のように押し寄せ、木の芽の青く爽快な風味で脂を切る。器は唐津焼 藤ノ木土平さん製。

●池多の野芹

●菊芋すりながし、菜の花

●熊そぼろ三色丼
最後に再び歓喜。ホタルイカと魚料理の流れの締めにこれは参りました。富山大長谷の月ノ輪熊をそぼろにして三色丼に仕上げます。

熊の溢れるパワーが炸裂する美味しさで、ご飯を進めさせる。うまい。大人の三色丼。

丁寧にお持ち帰りにしてくれました。これもまた嬉しい。

●プラチナ酒粕アイス
ふじ居定番のデザート。満寿泉のプラチナの酒粕で作ったアイスクリーム。

●菜の花
自家製上生菓子の刹那の美味しさよ。練り切りあんはユリ根ベースで緑色はほうれん草から、黄身餡を飾り付けて菜の花に。あんは土鍋で炊いた能登大納言。
このみずみずしさと繊細が最高のフィナーレ。お薄で一旦心を静めるが、帰り道も夢心地でした。

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