夏から秋に移り変わるタイミングは目立った食材がなくて、天候も荒れていことが多いため魚も入りにくく、料理人さんにしたら一番困ってしまうタイミングではあります。が、こういう時にこそ、食材力だけではない、小松大将の腕の高さや貫禄が随所に感じられてハッとなります。小松さんでは学ぶものが多い。季節毎に勉強になります。
●無花果の胡麻がけ
出旬の無花果が最初の一品に出てきて、すっかり気持ちは秋モードに。
無花果の産地として知られる宝達志水町の白イチジクで、天然の雅な薄甘さに、なめらかでクリーミーな胡麻ソースが重なります。美味。
●鱧と松茸のお吸い物
松茸は北海道。ほんわりと吹き込む秋の風。
●お造り アカイカ、キャビア
●アラ 輪島、塩 輪島、土佐醤油
輪島の4キロのアラが絶品でした。ムチっとした張りと噛みごたえ。
●ボタンエビ 輪島
まだ跳ねる活ボタンエビを準備してくれて、目の前で捌いでくれました。吸い込まれそうな身の透明感と筋肉の弾力。
●鱚の飯蒸し、すじこ
いくらではなく筋子を添えて。見た目よりも塩味軽く、いくらの粒感とは違った、筋子ならではのとろみとまろやかさを添えて。趣の中に可愛らしさのある梅鉢の器は、初代中村梅山。
●玉蜀黍すりながし
玉蜀黍の冷製すりながし。絶妙な粒感の残し方、フレッシュ感の残し方は天才的。雲丹がたっぷり入ってましたが、雲丹なしでも、主役が張れる玉蜀黍の美味しさ。さすがです。
●のど黒、銀杏
切り身からも大物であることを容易に想像できる身の厚さでした。この季節にしては結構脂が乗っていた印象。
●毛蟹、酢橘ジュレ
まろやかな塩味に酢橘をスッと立たせた爽涼なジュレを絡めていただく、ほぐした毛蟹。
●炊き合わせ キクラゲ、湯葉、吉川ナス
この時期小松大将がお使いになる吉川ナスは、福井県の吉川村と呼ばれていた現鯖江で育てられる丸茄子です。これが原種であるという説もあります。小松さんでこの茄子の美味しさを教えてもらいました。
果肉はギュッと詰まっていて、風味にフルーティーなニュアンスあり。出汁を吸って素材の甘さと重なり、さらに舌触りが滑らかで美味。
●稲庭うどん、焼き鮎
小松さんでのお食事は雑炊のことが多いですが、今回は秋田県発祥の稲庭うどんで不意打ちでした。しなやかでコシのある平打ちのうどんが、スルッと喉を伝って膨れた胃にもすんなり収まる。最初出汁が淡く感じるのですが、食べ進めると鮎からどんどん旨味が抽出され、濃度を増して行きます。
●葛切り
流したての葛切りの美味しさよ。前回よりも改良してあるというか、黒蜜の器(作家さんに作ってもらった)にもこだわって提供されていて趣が増していました。
うっとりする透明感と機械では出せないもっちりとした優しい弾力。ホロっと香ばしく奥深い自家製の黒蜜は、語りかけるような美味しさで、食後の余韻を残します。