オープンに訪れてから3ヶ月ぶり、移転後2度目となるお食事です。季節は厳しい冬から春へ移り変わるところ。道中、山肌にはまだ雪が残っていましたが、走行には問題ありませんでした。逆に雪のない時期に昼走ると、険しい崖や道の勾配がよく見えて、改めてすごい場所に作ったんだなぁと再確認しました。
お料理は、春食材の新作も増えており、前回とはまた違った景色を見せてくれました。
今回、席はカウンター席で。
●一献
石黒種糀店の甘酒にジンジャーを加えたもの。
ワインはセイズファームさんで
●プロローグ
スタートは毎度お馴染みのフィンガーフードからですが、新作新味もあり心踊りました。
細魚のタルトは独活とタラの芽の清涼感ある風味で山の香りの演出。ゲンゲは山椒の殻をまぶして。
黒部のシェーブルチーズと満寿泉の酒粕のグジェール。ビーツのメレンゲはレヴォ鶏のレバーを挟んで。冷たいレバーが舌の温度で溶けて重厚に広がる。八尾の胡麻風味の最中には八尾のエゴマと甘鯛で、エゴマのぷちぷちが弾けます。
さらにもう一品。あん肝は満寿泉の大吟醸に漬け込んで藁で軽く燻して。とっても繊細なお味。
●アスパラガス
城端の川端農園さんの朝採れアスパラに、ハコベラ、ルッコラ、芹、山葵、タネツケバナ、三つ葉のサラダを添えて。その中に隠れているのはポーチドエッグ。土遊野さんが育てるレヴォ鶏が初めて産む卵“バージンエッグ”のポーチドエッグは、黄身が白っぽくとってもピュアな味わい。アスパラのジュを合わせてソースとして、アスパラの清らかな美味しさに寄り添います。山里の繊細と野趣を味わう一品。
●パン
敷地内のパン小屋で作ったパン。
●月ノ輪熊(春)
春の熊は冬眠明けで脂肪が落ちていますが、赤身をしゃぶしゃぶにし、臭みやパサつきなどのネガティブな印象がないとても美味しい熊に驚きがありました。熊のほちゃほちゃとした食感に雲丹と熊の煮こごりが絡みます。保存食のゼンマイ、ウルイや野甘草とで春を表現。
●水蛸
熾火で燻した水蛸のムチムチやわらかい食感とスモーキーな風味。隠れているのは、吸盤、ハコベラ、梅肉のソース、大葉のオイル。
●蛍烏賊
目を引く美しい器は、富山出身のガラス造形作家 小島有香子さんの作品。ガラスを層にして重ねてあり、透明感のある静かな池のようでもあります。
今しがたまで生きていた蛍烏賊を熾火で火入れし菜花をのせて。蛍烏賊の鮮度と火入れの絶妙さを感じさせるふるふるの食感と、素材の美味しさを立てる味の添え方。
●黒エイ
エイ軟骨の食感が面白い。繊維感のあるしなやかな身に、プツプツと軟骨の歯ごたえが遊びます。貝の出汁、つくしと芹で春の味を添えて。
●大門素麺
谷口シェフのスペシャリテ。富山の名産品である大門素麺(おおかどそうめん)を使った一品です。大好きな料理。
乾麺として流通する大門素麺ですが、これは半生麺を使用しており、もちもち食感と旨味があります。白いスープは黒部「Y&Co.」さんのシェーブルチーズで、緑のオイルは春に採れたフキノトウ。ヤギチーズとフキノトウという、とても個性的な2つの風味の方向性を合わせておいしさに昇華させているところに感動があります。
●L’evo鶏
レストラン名を冠した谷口シェフのスペシャリテ。レヴォ鶏はシェフが「土遊野」さんと連携し、満寿泉の酒粕など飼料から指定して育てられています。
レヴォ鶏の中に、熊の脂で炊いたご飯と鶏もも肉・胸肉を詰めて焼き上げてあり、旨味を蓄えた脂が飛び出すので火傷注意。マスタードソースを付けて熱々を慎重に口にすると、ピュアでいて骨太な旨味が堂々と広がり余韻として続きます。毎回楽しみな一品。
●内臓
月ノ輪熊の小腸とアザミを使った一品。驚きの美味しさでした。
小腸はとろけるように柔らかく、さらに上品で優しい味わい。熊は冬眠明けにアザミをよく食べるらしいのですが、レヴォ近隣の川沿いで採れるアザミをソースとして。ソースも繊細な味わいで、野趣と妙味を添えます。富山のヤギバターでそっと膨らみを出す。
●猪
イノシシのスペアリブは、手に持って骨周りのおいしいお肉を余さず。噛むほどにほとばしる旨味を、レモングラスの風味が持ち上げます。
●日本鹿
熟成庫にて1ヶ月ほど熟成させた日本鹿のロース肉を、猪と鹿のジビエソースで。プチベール、野蒜、黒大根を添えて。
●よつぼし苺
乾燥させたイチゴの透明感あるチップをトッピングした美しいデセール。さらにイチゴのソースとシャーベットで3つの異なるイチゴのニュアンスで、口の中が凝縮したイチゴでいっぱいに。ミルキーなモッツァレラチーズと青い風味の春菊と共に。
●白小豆とよもぎ
よもぎブランマンジェに、きな粉のチュイールや大麦などでさまざまな食感をアクセントに加えて。乾いた食感を感じるとそれぞれの香ばしい風味が弾けます。白小豆のほつほつと繊細な食感と甘さも美味。
●小菓子