訪問日

2020

12/19

「L’évo」冬:寒鰤キャビア、赤蕪、月ノ輪熊(冬と春)

初訪問はオープン日3日前に伺うことができたのですが、大雪の警報の通り、吹雪に向かって進むことに。土地勘ある方がハンドルを握ってくれたので迷わず到着しましたが、雪で道のりは危険なものでした。冬は私の運転では行けないなぁ。
レヴォは利賀川を望む場所にあり、細い橋を渡って到着となります。傾斜のある屋根の集落が見えてきたらゴール。これがレヴォです(レストラン棟)。

料理は、冬は蟹や寒ブリなど海の王様食材が豊富なのですが、山は山菜が出てくる春からがメインとなるので、逆に食材は寂しい季節。しかしながら、工夫とプレゼンテーション力の高さで大きな感動を与えてくれました。
●プロローグ
5種類のアミューズから幕開け。香箱ガニ入の八尾もなか、黒部「Y&Co.」さんシェーブルチーズのグジェール、熊の手のタルトレット、ゲンゲと山椒、ビーツマカロンに鶏レバー。

特に印象的だったのは熊の手のタルトレット、菊芋チップのせ。これは初めて出てきたアミューズ。口に放り込みタルトが弾けた瞬間にゼラチン質がとろとろと口に雪崩れ込みます。

●寒鰤
冷たい山風に当てた寒鰤と大根を組み合わせた谷口シェフの“鰤大根”。高級食材であるキャビアに目が行ってしまいますが、実はこれはシェフの自家製であり、主役としてではなく調味料的に使ってあり、鰤と大根のコンビネーションを引き立てます。
キャビアはシェフが鮫を捌いて自分の塩分濃度で作ってあるため、塩気に邪魔されることなく魚卵のおいしさが伝わりました。天然の西洋ワサビのソースが引き締めます。

●パン
敷地内のパン小屋で作ったパン。

●月ノ輪熊(春)
春をテーマとした熊の一皿。春どれの熊に熊のジュレ、ウニ、干ゼンマイ、子持ち高菜などをあしらった、心浮き立つような華やかさです。春の熊は冬眠明けで脂が落ち、野生的で嫌な臭みがある印象ですが、ネガティブな個性やパサつきが出ておらず、とろんとたおやか。赤身の美味しさを教えてくれました。
また、今のような冬の時期は食材がなくなるため、ゼンマイなど保存できる食材を冬に向けて作り出す雪国の習慣や知恵も織り込んであります。それらの食材で春を上手く表現。

●水蛸
水蛸だが冷製のカルパッチョではなく、熾火で絶妙な火入れを施した、程よいスモーキーな風味のある温かい一品。足のほちゃほちゃと柔らかな食感、吸盤の遊ぶような歯応えが楽しい。
大葉のオイル、梅のソースで。

●真鴨
鴨つくねを鴨の血と内臓の重厚でビターなソースで。予想以上にレアな仕上がりで、炙りタルタールのような印象。氷見セイズファームさんの葡萄の枝を使用。

●大門素麺
乾麺として流通する大門素麺(おおかどそうめん)ですが、これは半生麺を使用しており、もちもち食感と旨味があります。
白いスープは黒部「Y&Co.」さんのシェーブルチーズで、緑のオイルは春に採れたフキノトウ。とても個性的な2つの風味の方向性を合わせておいしさに昇華させているところに感動があります。

●月ノ輪熊(冬)
春の次は冬をテーマとした熊の一皿で、全く違う景色を見せてくれました。まず、脂を蓄えている冬の熊なので、脂の幅に驚きがあります。それをしゃぶしゃぶとして。一般的な醤油ベースではなく、繊細な雉のコンソメなので脂そのものの美味しさが伝わります。先ほどの“春”とは食べさせる目的とおいしさのポイントが違う“冬”の熊。

●L’evo 鶏
レストラン名を冠した谷口シェフのスペシャリテ。L’evo鶏はシェフが生産者さんと連携し、満寿泉の酒粕など飼料から指定して育てています。前回まではどぶろくを塗って旨味を凝縮させ、山野草やもち米を詰めていましたが、今回は熊の内臓を詰めて大地のパワーを感じる味わいでした。

●赤蕪
この辺りの特産物である赤蕪を、腐葉土で包み焼きにした一品。シェフの新メニューですが、スペシャリテになるのではないでしょうか。日本一美味しい蕪料理だと思います。

“包み焼き”という手法はレストランでよく見かけますが、旨味を内包するだけでなく、意図的に水分を抜くことで、より一層蕪の旨味が凝縮していて、甘さがグッと前に出ていました。感動的美味しさ。

●真鱈
以前は“漆黒”という名前で提供されていた料理。鱈をイカの黒づくりで熟成させて熾火焼きに。百合根のようにほぐれる繊維感に加えて、さらにキメ細かくほぐれます。カリフラワーのピュレを添えて。

●仔猪
今まで食べた中で一番美味しかった猪料理。火入れがパーフェクトで、赤身もそして脂もサラッとピュアな味わいで、ボリューム感があると思いきやすんなりと胃に納まりました。ちよろぎ、干し大根、ほうれん草と共に。

さらに、高村刃物店製のオリジナル木製ハンドルのナイフが、スッと気持ちいい切れ味で、おいしさに貢献していました。

●よつぼし苺
乾燥させたイチゴの薄いチップが透き通っており花びらのよう。イチゴのシャーベット、モッツァレラチーズ、春菊、トマトのエキス。

●あんぽ柿
どっさりと屋根に降り積もる利賀村の雪を連想させるデセール。あんぽ柿だけでも完成された美味しさなのに、それ以上に美味しくするという感動のある一品。マスカルポーネのもったりとしたエスプーマに塩を添え、塩であんぽ柿の甘さと存在感と輪郭を出す。

●カフェ、プティフール

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