訪問日

2020

02/28

「片折」春:生クチコ玉締め、珠洲ゼンマイ、稲荷豆冨(9度目の訪問)

松茸やカニといった王様級の食材がない季節。そんなときだからこその片折さんの工夫が素晴らしいと思いました。やられたー!の連続でした。

●野芹粥
医王山の麓で片折さんご自ら摘んできた野芹のお粥。

●お吸い物 柳バチメ
まずは吸地を頂いて一口美味しさに浸ります。鎮座しているのは氷見朝どれ柳バチメ。サイズが大きくなり過ぎると身がかたくなるので程よい大きさのものを半身使っているのだそうです。めちゃくちゃ高級魚なわけではないですが、一番おいしく頂ける短い旬のちょうどど真ん中に頂ける幸せ。

●ヒラメ造り
片折さんが刺身を引くとき自然に静かになる客席。手元に一点惹きつけられます。息を飲む音が聞こえそう。二代須田菁華さんの器に映える、氷見ヒラメの海水のような透明感よ。見た目に呼応する澄んだ味から、一呼吸置いて立ち上がってくる甘み。白山市の山葵が引き立てます。

●生クチコの玉締め
今の時期だからこそ味わえる美味のひとつ“生クチコ”を、最大限の美味しさで味わえた一品。石川県能登の七尾はナマコの漁場として有名で、(故郷七尾の)私もナマコや干クチコ、コノワタは食べる機会が多いのですが、だからこそ一線を画する美味しさには感動があります。舌に当たる細く柔らかなクチコは干していないからこそ。また、塩味がとにかく優しいのも生だからこそ。

●メジマグロ造り
脂がスッとした綺麗な味わい。この美味しさもちょうど今だからこそ。

●あん肝酒蒸し
ふわっとしていて舌の上から消えるよう。極上の口どけ。

●なます
箸休めとして出してくれた一品ですが、こだわりは徹底しています。大根や人参は原種を継承しているもので、片折さん自ら畑から抜いて来たもの。シャキシャキ心地いい食感と瑞々しさ、透明感。

●珠洲の干ゼンマイ
珠洲のゼンマイの、干して程よく凝縮した旨味と甘味がいい食感のうえに立ち上がり、広がり余韻する。添え物は壬生菜。

●アワビステーキ
能登半島の先端、宇出津のアワビをステーキで。とぅるんと滑り込んでからの歯が喜ぶやわらかな食感と焼きの香ばしさ。コースの流れにこのメリハリ。

●かぶら
蓮蒸しのようにしたかぶらは白く光り輝く雪のよう。その雪の下には、冬の寒さに耐えた蕗の薹が春を待っているという演出。ミネラルを感じる苦味が味を引き締め、眠っていた体の細胞も目覚めさせてくれました。

●稲荷豆冨
こういう古典料理が秀逸なところがすごい。油揚げに豆乳を充填して作った稲荷豆冨。新大正もちの一等米(もち米)お餅入り。出汁を吸ったお揚げの甘さが中のお豆冨に寄り添います。端正でありながら懐かしみすら味付けにする、涙腺が緩む美味しさ。

●お食事
5つの顔で楽しませてくれました。
①光り輝くお米は氷見のコシヒカリ一等米。まずは銀シャリでそのポテンシャルを味わう。
②漬けマグロのせ
いい脂のマグロがご飯に身を寄せる。とろんとしてご飯の粒に溶け合い、お醤油の味わいがご飯を進めさせます。うまい。

③イワシ茶漬け
濃いめに味が入った鰯からの塩味のグラデーションが美味。

④時雨煮

⑤鰹節のせ
冒頭に削ってくれる珠玉の鰹節。あれを食べてみたいとみんな思うやつ。また少し削ってくれて、ご飯にのせて。説明不要の美味しさ。シンプルだが記憶に残ります。

●いちご大福

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