訪問日

2019

08/30

「御料理 ふじ居」夏:のど黒、鮎、青バイ貝

今回の珠玉食材は何と言っても2キロある新湊の“釣りのど黒”で、大きさにも味にも圧倒されました。

●岩瀬白海老と夏野菜
最初の一品。青々とした大きな蓮の葉を器にして、白えび夏野菜寄せをのせて。藤井さんの寒天寄せ、好きだなぁ。

●はも 冬瓜
輪島塗の椀蓋に描かれているのは、毎年9月1日〜3日に越中八尾で開催される(前夜祭8月20日から)風流なお祭り「おわら風の盆」の“男踊り”。ポーズが5種類あるそうで、お隣さんとは動きが違うんです。

さらに驚いたのは、見返しに描かれている“女踊り”。風の盆ムードが高まる中、卓上でも風の盆を楽しませてもらえて嬉しい。
藤井さんの吸地は本当に好み。ホッと胸を撫で下ろせる美味しさと洗練。そこはかとなく立ち上がってくる甘さあり、鱧がよく合う。

●新湊 マゴチ
こういう薄造りはセンスが大事なのか、藤井さんの薄造りはいつも厚みが程よくて美味さ最大限に感じられます。珠洲の天然塩が甘さを引き出す。

●新湊 バイ貝炙り
越中バイ(青バイ貝)は大きさが立派なのですが、殻が手でクシャッとできるほど薄い。身はこんなに大きい。

これを藁焼きにして瞬間で香りを移します。藁は火がすぐに消えるので火が入り過ぎず、ほんのり炙るのに適する。

馥郁たる香りと、思わず目を閉じて味わいに浸りたくなるやわらかさと甘さ。美味。柿茶色の濃淡が趣深い瓢箪の器は瀬戸焼でバイが映えます。

●新湊 のどぐろしゃぶ
新湊の“釣りのど黒”のタグ付きで、この日の市場の最高品だろう2キロはある大物。お腹もパンパン。なんだか気分はお正月(笑)。これを目の前で捌いでくれたものをしゃぶしゃぶに。なんて贅沢なんだろうか。

これだけ面が取れるのは、やはり大物だからこそ。もちもちとした身を口いっぱいに頬張る幸せ。なるほどこれは塩焼きよりもしゃぶしゃぶがいい。おいしい脂を蓄えたたおやかな身。余韻までしばらくずっとおいしかった。

●八寸
八尾の「下尾デザイン」さんの、一枚板から丁寧に削った木の器に八寸を。
左から、桃のごま醤油、きぬかつぎ、白身入りの自家製カステラ、茶豆、富山南砺市どじょうの蒲焼き、汲み上げ湯葉、八尾高野さんの黒ごま最中にビーツペースト

きぬかつぎには京都の大徳寺納豆が射込んであって、その塩味とコクが生酛の酒に抜群の相性でした。

●神通川 天然鮎
さっきまでピチピチ元気よく跳ねていたやつを塩焼きで。

この時期はもう大きくなっていて頭からというわけにはいかないですが、藍墨茶色の皮目の香ばしさとふっくらした身の対比が美味。

●ズイキ 雲丹
北海道産はだての生うにも美味だが、ズイキが端正でしみじみうまい。橙酢が良く合う。こういうところは藤井さんさすがです。

●吉川なす
福井鯖江の吉川なすは丸茄子の一種で伝統野菜のひとつで、繊維がとてもきめ細かくシルクの舌触り。藤井さんの茄子料理は見た目は超シンプルですが美味。夏のスペシャリテ。

●とうもろこし御飯 香の物 汁
中川一辺陶さんの土鍋にて。ご飯を覆い尽くす艶っと眩しいトウモロコシの黄色、そして焦げ目に食指が動きます。

太陽の香りが鼻腔をくすぐり胃袋が騒ぎ始めます。プチッと跳ねてぴゅっと飛び出るエキス、出汁の効いたご飯にトウモロコシのおいしさも溶け込む。塩味の加減も絶妙で次の一口を急がせます。食べ出したら止まらない!

もちろん2杯目も。おかわりで頂いたおこげににんまり。

お持ち帰りにも頂きました。

●プラチナ酒粕アイス、能登大納言あずき
満寿泉のプラチナの酒粕で作ったアイスクリーム。赤く大粒が特徴である能登大納言あずきと共に。お薄を頂きながら、「ああ、次は秋に」と思うのでありました。

 

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