訪問日

2021

06/11

「片折」初夏:青バイ貝、ボタン海老 (14度目の訪問)

気温30度、夏日和の金沢。そう言えば暦の上はもう夏。七十二候では、湿った草から蛍が出てきて、幻想的な光を灯しながら飛び交う「腐草為蛍」に当たります。ロマンチックな夏の始まり。

2ヶ月前とは食材とお料理がガラリと変わり、ドキドキの連続でした。夏らしいお料理の数々に、刻々と移りゆく季節を丁寧に摘み取って表現されているこもが改めて伝わりました。
松茸やカニなどの王様食材がない時期ですが、こういう時の片折さんにはまた別の良さがあって、特に、通われている方にはこっちが好きな方も多くいらっしゃるはずです。片折さんの世界観がバシバシ伝わってきますよね。
ちなみに片折大将、毎日寝るのは確実に0時越えなのに、4時半には目覚めて能登や富山などの漁港や生産者を目指すという生活です。本当に頭が下がります。ここまで突き詰められて生み出される料理の尊さ。でも体壊されませんように。

●青バイ貝、一寸豆、金時草
夏の風物詩、青バイ貝のシャクシャクとした食感と咀嚼するごとに立ち上がる甘さ。

●能登飛魚の沢煮椀
今回のお吸い物の椀種は飛魚すり身。吸地に飛魚の旨味も溶け合い、旨味の相乗効果でまろみと深みが海のように広がる。千切りのネギをたっぷりとのせた沢煮椀で。

●お造り マコガレイ、アオリイカ
七尾の朝どれアオリイカ。寝かせたイカも美味しいですが、活きの良い朝どれも良いもので、細かく深めに包丁を入れることでピンッとした質感が舌に当たり心地よく、甘さもしっかり伝わります。

●新湊ボタン海老、氷見マグロ
大樋焼馬上盃(ばじょうはい)にて。この高台の高い器は、昔、馬の上で盃を交わすために作られた酒盃で、高台を握って持ち、酒を飲んでいたそう。楽焼の手法の伝統と格式を守る「大樋焼」と言えば、飴色の釉薬が特徴ですが、こちらも大樋焼。焼成温度を高くして焼いているそうです。崇高な美しさ。
箸にどっしりと重みを感じる立派なボタン海老、頭は後ほど汁として。

●のど黒レタス
炭火焼のど黒はほわほわとしており、口の中で美味しい脂がジュワッと湧き出す素晴らしい火入れ。溢れた脂を受け止める千切りレタスも美味。

●雲丹素麺
福井県産ムラサキウニを素麺に絡ませて食べる贅沢な一品。ねっとりと密度は濃いが、上品な甘み。珠洲の天然蓴菜がとっても涼しげで、ちゅるんと滑る喉越しにも夏を感じました。

●ヘタ紫なす
加賀野菜“ヘタ紫なす”は、ヘタの下まで紫色の卵形のナス。冷やし鉢として。こういう料理に力量が現れますね。添え物の錦糸卵も美しい。

●甘鯛酒蒸し

●加賀丸いも
加賀丸いもは、石川県能美市・小松市で栽培されるブランド山芋で、砲丸のようにどっしりまんまるの形をしているのが特徴です。粘り気の強い丸いもは少しシャキシャキ食感を残して寄せて豆腐のようにし、軽く昆布締めにした白海老を乗せて。白海老は小さくとても繊細ですが、一つ一つ綺麗に身出ししてあり、美しさに惚れ惚れします。

●揚げ豆腐
日本人のDNAが反応する、片折さんの泣ける古典レシピシリーズ。揚げ豆腐の美味しさよ。宇出津のアワビもうまいが、主役は揚げ豆腐。口の中に含むと出汁がじゅわぁとなり、香ばしさと奥深い甘さが波紋のように広がる。

●お食事
氷見牛の八幡巻き、香の物、ボタン海老頭入りの汁

おかわりは、マナガツオ天丼、ヅケ丼、卵かけご飯

●わらび餅
冷涼で風情のあるデザートで締めくくり。弾力のあるタイプで、ちゅるんと清涼感があって、さっぱりと控えめな黒蜜が趣を添える。

紹介ページに戻る