8回目の訪問。前回からちょうど3ヶ月ぶりとなったふじ居さん。季節もガラリと代わり、秋が深まって冬のにおいもしてくる頃です。11月6日にカニ漁が解禁となったので、香箱ガニも楽しみに訪れました。
●玄猪 飯蒸し
もち米に生クチコを射込んでとろろ昆布をまぶした“亥の子餅”で幕開け。こういうタイプの亥の子餅は初めて。輪郭のあるもち米を咀嚼するとじんわりと甘さが出てきます。ふわっとした昆布ととろとろとした生クチコの絶妙な塩気と。
●蕪 蟹しんじょう
藤井大将の吸地はしばし目を閉じて浸りたくなる美味しさ。とくとくと広がるまろみが、舌にとろんと滑り込んでくるような繊細なカニしんじょうに溶け合います。
●お造り
生地(いくじ)の活ヤリイカ。今にも泳ぎだしそうな透明感のある活ヤリイカを、手際よく目の前で捌いてお造りにしてくれました。
今朝上がったアオリイカとの食べ比べで。器は須田菁華さん。
なんといってもピンピンと張ったヤリイカの歯ごたえが格別。エンペラ部位のコリコリも美味。とても贅沢な食べ方。
●氷見ブリ
11キロ越えのブリの砂ずりと大トロをお造りで。熟成ではなく、ここに来てこそ食べられるフレッシュなブリの最上の美味しさを教えてもらいました。パンパンに張った砂ずりのサクサクとした歯ごたえと、フレッシュながらしっかり感じる旨さ。富山のブリのポテンシャルの高さよ。器は五代目楽家五代宗入で。
●珠洲松茸 味噌漬け
箸休めとして。味噌漬けすることによって香りもグッと増し、シャクシャクした歯ごたえを感じるたびに重厚な味わいが広がります。何気なく出してくれたが絶品。
●砂ずりしゃぶしゃぶ
こちらも箸休めとして、お刺身で頂いた砂ずりに近い部位をしゃぶしゃぶで出してくれました。脂っ気を取り払うポン酢でさっぱり。
●甲箱蟹
甲箱蟹をケジャンのように醤油などの調味料で漬け込んだもの。
何日もおいしさの余韻に浸ってしまう、記憶に残る一品。味付けのバランスが絶妙で、素材の輪郭をハッキリと出しつつ品のあるおいしさ。ケジャンとは違う、和の美味しさに仕上げているあたりも大将の素晴らしさ。にぼしがほんのり効いていて、その風味がスッと味わいに溶け込んでいる。
炊きたての銀シャリを少し頂きながら。コース中盤で炊きたての土鍋炊きご飯が準備されるという、この手間も有難い。このご飯がまた素晴らしく、お米が立っていて輝いていました。
酒泥棒でありご飯泥棒でもある、ふじ居さんの冬の逸品。
●八寸
秋色の八寸。すっかり暗くなった夜の景色に紅葉した葉が浮かび上がります。グラデーションも美しくずっと眺めていたくなる。
藁苞の中には、鳥松風焼、魚すり身カステラ、魚津のラフランスの白和え衣。
七尾新イクラ、八尾モナカに大和芋ととんぶり、エノキとジャコを炒めた京都のおばんざい、生麩チーズはさみ焼。
●かます
かなり立派なものだと思われるアカカマスを松茸を巻いて炭火焼に。
●あんぽ柿
紅白なますに福光のあんぽ柿、胡麻醤油で。菊の花の器は京焼の白菊。この料理も次の料理も、コース中の“引き”となるが、そういう料理に発揮される料理人の繊細さと実力。藤井大将は細部まで手を抜かない。
●里芋
上市の里芋を炊いたもの。当代矢口永寿で。
●吹き寄せごはん
さつまいものイチョウ、にんじんのもみじしめじ、ムカゴ、銀杏、蓋を外すと目に飛び込んでくる秋の景色。心踊る吹き寄せごはん。
●プラチナアイス
デザートの定番、スペシャリテです。満寿泉の純米大吟醸の酒粕を使った重厚な味わいのアイス。
●炉の火
炉開きの季節、炭に種火が灯る景色を表現したお菓子で、海老芋あんに金時人参、能登大納言。
海老芋あんのなめらかなな口当たりと儚い口どけ、滋味と自然の甘さ。このコースを昇華させるのにふさわしいお菓子。