訪問日

2022

09/13

「料理小松」秋:スッポン玉締め、無花果揚げ出し、甘鯛と門前栗

前回訪問は8月31日で、2週間前に伺ったばかりでしたが、お料理はガラリと秋になっており、まだ夏を引きずったままの私に、秋のスイッチを入れてくれました。
今回は、小松大将の貫禄や腕の高さ、センスが直球で伝わるお献立で、「料理小松ここにあり!」と言えるコースでした。なんだかジーンとしてしまった。

数ヶ月前まではサービススタッフが少なくて、正直提供時間などにストレスを感じる時期もあったのですが、それが解消されたのもあり、食べ手も料理だけに没頭できます。

毎秋出してくれる門前の栗を使った甘鯛のお料理も出てきて感激。小松大将のスペシャリテと言いたい。究極ですよ。その他印象的だったのは、すっぽん玉締め、伊勢海老、筋子飯蒸し、無花果、イナダ。

●スッポン 玉締め
鈴虫の音が聞こえてきそうな虫かご。最初から風流な演出に心掴まれました。スッポンの玉締めは、繊細で澄んだ味わいで思わず吐息が漏れる。(おそらく服部中村養鼈場さんのスッポン。)

●焼カマス、松茸、菊
口頭として添えた黄色の菊が、吸地にゆらめいて風流。見返しには中秋の名月が描かれていました。

●お造り アカイカ
まだいかった状態の朝どれアカイカは、細かく丁寧に包丁を入れて甘さを内側から引き出します。寝かしていないアカイカだからこその締まった弾力も美味。キャビアの塩気で。

●お造り 鯛
こういうお造りを決めてくるのも小松大将の凄さ。引き締まった身の甘さと食感。湯引きした皮も添えて。

●お造り 伊勢海老、甘海老昆布締め
伊勢海老は特大を活のままで準備してくださいました。捌いたばかりの身は透明感があり、筋肉の弾力もしっかりあり。海老味噌醤油を付けて食べるという贅沢。地物食材ではないですが、今日の貸切会は全員地元の方にしてたので、これはこれでとても良かったです。
甘海老昆布締めは、伊勢海老のような高級海老ではないですが、絶妙な旨味の乗せ方が秀逸で記憶に残りました。

●筋子 飯蒸し
いくらではなく筋子を添えて。見た目よりも塩味が軽く、いくらの粒感とは少し違った、筋子ならではのとろみとまろやかさを添えて。

●無花果 揚げ出し
旬の無花果は良いものを選定し、衣を纏わせ丸揚げに。衣と皮で果肉が内包されたまま揚げられることで、繊細な甘さや旨味が凝縮。香りも素晴らしい。とろとろにとした実に、出汁を絡ませながら。

●氷見 のど黒

●毛蟹、酢橘ジュレ
地物の毛蟹のほぐし身に、まろやかな塩味に酢橘をスッと立たせた爽涼なジュレを絡めて。コースの流れに冴えた味のアクセント。

●甘鯛 輪島、栗 門前
小松大将のスペシャリテと言いたい。写真では映えないですが、本当に素晴らしい美味しさです。
甘鯛に能登の門前の栗をのせ、出汁餡がけにしてあります。栗の雅な滋味と横幅のある甘みが、口溶けの良い鯛とつなぎとなる出汁餡で一体になり、口の中で溶け合う。しみじみ美味しい。

●いなだ茶漬け
能登の伝統保存食「巻き鰤」は、鰤を塩漬して干し縄で巻いた保存食。これは鰤の出世魚である幼魚のイナダを、産卵後の脂が落ちた状態で、半身で作って乾燥させた上物。
削ってお茶漬けにはらり。凝縮された旨味と塩気がグラデーションを描きながら出汁に染み出し、ご飯を進める。

●栗きんとん 門前
宮本雅夫さんの作品「緑彩」の九谷色絵真麗線文組皿(かな?)。放射線状の線描と美しい翡翠色に吸い込まれそうになります。
こちらも門前の栗。ペーストにするのではなく、すり鉢で擦って香りを活かしてあり、粒感を残してあるのも美味。存在感のある究極の美味しさ。

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