訪問日

2022

11/17

「くちいわ」2022年11月17日

今回は予約を入れての初訪問。11月12月と言えば北陸はカニ祭りですが、ここはここの“らしさ”を貫いて魅力を最大限に発揮しているのが良いです。どことも違うスタイルを確立されています。

●そば
一品目はそば。舌も胃袋も記憶も真っ新な状態で、まず最初に腕の見せ所であるおそばからというプレゼンテーションが最高です。
今回は10月下旬に収穫したそばで、うっすら緑色がかっています。そばで季節の味わいの変化が楽しめるというのもここならでは。

口に入れる直前に、そばの香りがスッと鼻腔に舞い込んできて一瞬ハッとする。食感、喉越し、風味、味わいがパーフェクトで、余韻まで美味。
何も付けずにそのままで全部胃に収めてしまいそうでしたが、お塩を付けるとまた素晴らしくて2度目の驚き。塩は厳選したスペインのアニャーナの塩で、こちらがそばに相性抜群です。角が立っていないしエッジも効きすぎておらず、そばに寄り添い優しく輪郭を出すのに一役買っています。
つゆもつけたいが塩で箸が進む。しかしながら、つゆを付けるとこれもうまいという罠。
日本料理の出汁の引き方とは違い、鰹はしっかり煮出しているそうで、それがかえしとそばに合うんですね。

●そば屋のおつまみ
秋茄子の出汁びたし、茹落花生、低温調理 鴨ロース、焼き味噌、醤油豆、おから、蒲鉾(鈴廣)
“大人のハッピーセット”と出してくれたおつまみセットは、心躍る酒肴。

落花生は、富山入善朝日で掘りたての生落花生を農家さんから直接買っているそうです。ぷっくり膨れた実がパンパンに詰まっており、味わい深い。
焼き味噌は、ネギ・大葉・柚子・そばの実を白味噌などブレンド味噌に混ぜ込んで、しゃもじに塗りつけて焼き目をつけて。発酵食のコクと甘さに薬味とそばの実の野趣が後を引き、その余韻でまた酒が進んでしまうという罪な一品。
醤油豆もハマった。通常大豆は一晩水から戻して柔らかく炊き上げますが、こちらは炒ってから甘じょっぱく炊いてあるので、シャキシャキとした食感とキレのあるお醤油の味の添え方も美味。

●だし巻きたまご
これぞそば屋のだし巻きと言えるかえしの効かせ方で、たまごのコクにしっかりとかえしの味が乗っていて、コースとしての繋がりもあります。目の前で巻き立ての、ふるふるの熱々。最高です。

●馬刺し 福島、にんにく味噌

●そば
最初のおそばと同じものですが、切り幅を変えることで味わいの違いを感じさせるプレゼンテーション。
細打ちのおそばの茹で時間は25秒ほどですが、こちの板状そばは1分半で、ややしっかりめの噛みごたえ。よく噛むことで、香りも甘味も引き出されてより強く感じられます。

●鰤 魚津、辛み大根
この日魚津で1万トン揚ったという鰤。レア感をほんのり残した火入れも良かった。腹の美味しい部分は脂が乗っていますが、口岩さんのお母さまが育てる辛味大根がさっぱり脂っ気を切ってくれました。

●そばがき
スペシャリテと言える一品。まずは目の前で穀物専用のグラインダーでそばの実を挽くところから見せてくれます。

さらに目の前で、鍋で練り上げてくれます。
火を入れると徐々に粘度を増していき、自然薯のような粘りを帯びてくる。出来立ての湯気の上がるそばがきはもうビジュアルからたまらん。


プチっとした粗びきの食感と、粘り気の2つを口の中で感じながら。この妙味が素晴らしい。

●そばがき 揚、ゲランドの塩
今ほどのそばがきを、お次は揚げて出してくれました。これはまた味わいが異なって違う景色。
揚げることで表面に輪郭が出てザクザク香ばしく、中はふわふわというこの対比が美味。熱々の温度と共に滋味もほんのり立ち上る。

●牛肉しゃぶしゃぶ
次の温かいおそばのつゆのために、牛肉をしゃぶしゃぶにてその脂を使うというなるほどの一品。粗挽きの胡椒とお塩で。


●穴子天ぷら

●舞茸そば
山で育てている舞茸の香り高い風味と、先ほどしゃぶしゃぶした牛の脂が溶け合ってほんのりと厚みが出たつゆで。
温かいそばの欠点と言えるのが、つゆの中でどんどん柔らかくなってしまうことですが、これを逆手に取って、太めの十割そばを使用することでプラスに。繋ぎが九割よりも強固ではないため長さは短めですが、時間の経過とともにつゆを吸っていく。
そばがうまいがつゆもうまい。結局つゆは飲み干しました。胃から体に染み渡って細胞が喜んでいる。

●ミルクプリン
ミルク感たっぷりの雪のように真っ白なプリンにとろっとかかるのは、そばの花から採取した蜂蜜と、炒ってカリカリばしいそばの実。最後までそば屋さんとしてのプライドを感じるコースの組み立て。
合わせたのは満寿泉の貴醸酒で、同調パーフェクトなペアリングでした。

紹介ページに戻る