訪問日

2023

12/05

「片折」冬:香箱ガニ、湯豆腐、きびだんご(26度目の訪問)

冬の王様食材と言えばカニがその代表格に挙げられますが、 片折ではカニを主役としたコースの提供を今シーズンから辞めました。 理由はいくつかありますが、カニの水揚げ量が年々減り価格が高騰する中で、無理をして使い続けることに疑問を持った点、そして(カニ目的ではなくて)片折の本質的な料理を楽しみにしてくるお客さんを楽しませてあげたいという理由です。
カニがメインでなくてもカニ料理は2品ほどありましたが、カニを主役に置かないことで新しい料理に大いに挑戦されており、本当に素晴らしい食体験をさせて頂きました。
特に驚いたのは、卓上の湯豆腐ときびだんご。あとは、毎冬定番の絶妙な火入れの香箱ガニは今年も素晴らしく舌鼓を打ちました。

●源助大根の風呂吹き

最初の至福は加賀野菜の一つ、源助大根の風呂吹き大根です。寒さ厳しい季節に突入した金沢。身を包み込むような温かな料理を序章に。山のお水と昆布だけで炊いた、美しい風呂吹き大根の聡明な味わい。

●お吸い物
真薯とは名ばかりで、ほぼ繋ぎなしの椀種が片折のカニ真薯。そのつるりとした至福の舌触りは言葉に尽くしがたい。てろんと喉を通り、吸地の返り味と膨らみが余韻に広がる。

●香箱ガニ
内子の半熟卵のような極上の口溶けと衝撃の美味しさは、冬の片折で一際輝く存在である一品。
香箱ガニは、一般的に内子にしっかりと火が通って固めに仕上がっていますが、片折では提供タイミングに合わせて火入れ・身剥きしており。内子がレアな卵黄のようなふるふるとした食感で、香箱ガニのこれまで知らなかった魅力を感じさせます。
身もほわほわとほの温かい状態。外子も通常はスカスカな印象ですが、片折ではしっかり味が入っているという、緻密に計算された味わい。他では食べられない衝撃の美味しさに仕上げてあります。

●お造り
ヒラソウダガツオ、アオリイカ、自家製からすみ

●鰤、鰤ハツ 新湊 今朝どれ12キロ

●カニ味噌粥
カニの甲羅で仕上げるカニ味噌入りのお粥。使用するお米は餅米で、絶妙に輪郭を残しており、咀嚼するたびに旨味が口いっぱいに広がります。

●テッポウカマス幽庵焼き

●柿なます
柿を野菜のように使用し、シャキシャキとした食感と酸味が実に効果的に絶妙なバランスを生んでいます。

●干ぜんまい しのだ巻き
片折さんがクラシックレシピを掘り起こしたお料理は、琴線に触れる、泣ける美味しさ。派手さはないが和の真髄に満ち溢れます。ゼンマイの戻し方と出汁の含ませ方が秀逸で、干すことで凝縮された旨味と、絶妙な戻し方によって最高の食感が実現されています。懐かしさを感じさせるほんのり甘めの出汁を含んだお揚げさんが深みを与え、洗練された技術と伝統が融合。日本料理の粋を味わえる一皿。

●きびだんご
今回驚きの一皿だったのはきび団子。
料理名から連想する以上の繊細な面持ちと、そのきめ細かい粒感と滋味を生かし、食べ手に感動を与える。
中には、道明寺、ゆり根、クエ、うなぎのかば焼き。

●湯豆腐
衝撃の一品。この冬からの新作です。

湯豆腐を卓上で楽しむ機材を、京都の職人さんに依頼して作ってもらたそうです。個々で湯豆腐が味わえるようになっていて、昔懐かしさが漂う。檜製なので檜の香りもご馳走です。これはたまらない。
丸い穴が2つ開いており、1箇所には炭を入れ、もう一方には底が深い土瓶が入るようになっており、タレも保温できるというわけです。
大豆は奥能登珠洲の希少な大浜大豆を使用しており、力強くて濃厚でピュアな味わい。そのお豆腐の美味しさはもちろん、炭火が熱源で温められた檜の桶の湯から自らすくって食べる喜びたるや。

●お食事 氷見のコシヒカリ一等米
ミンククジラうね味噌汁、氷見牛時雨

●葛焼き
焼きたてのアッツアツを手で掴んでハフハフ言いながら。きつね色に焦げる皮目の香ばしさと透明感あるアンバーの葛、深く情緒ある甘さが広がる。

紹介ページに戻る