訪問日

2021

12/14

「一本杉 川嶋」冬:香箱ガニ、加能ガニ、海鼠、沢野ごぼう

冬の川嶋。カニが主役になる季節ですが、その他の食材も光っていて良かったです。七尾の海鼠や伝統野菜の沢野ごぼう、本鰹、「日の出大敷」中田洋助さんの鰆、鯖。さらに自家製のウスターソースの美味しさにも驚きました。

●能登若芽のグリッシーニ
輪島塗の棗を開くと能登の若芽の茎が。若布の茎に能登のじろ飴(米飴)を塗ってそばの実をつけてグリッシーニ風に。

●海鼠粥
七尾を代表する冬の味覚の一つである海鼠をお粥として。さっきまで海にいた海鼠を藤の瀬のお水(藤瀬霊水)と精米したてのお米でお粥に。海鼠は赤海鼠と黒海鼠の2種類で、それぞれ食感が異なります。塩気は海そのもので、潮騒を感じる一品です。

●ズワイガニ
加能ガニ、朝採れの能登野菜の中島菜をスダチジュレがけで。川嶋さんではコース序盤に定番となっている“五味”を意識した一品です。器は山本長左さん。

●お吸い物
七尾が誇る“沢野ごぼう”の葛どうふとヒラスズキのお吸い物です。
沢野ごぼうは320年ほど前から栽培されている伝統野菜で、極太なのに繊維がやわらかく、さらに口いっぱいに広がる馥郁たる香りに定評があります。しかしながら、掘るのが重労働で後継者不足なのです(太くて長いため引っこ抜けない)。

小さい頃は給食にも出てきたのですが、近年数量が少なくてなかなか食べられなくなってきました。この素晴らしい食材を知ってもらいたい。
美味しさに加えてメッセージ性も感じるお椀。素晴らしかったです。
80年ほど前の輪島塗の“長命富貴”椀は、貫禄があって趣きがあります。

●お造り クエ、アオリイカ
クエは熟成6日目で、脂が乗っていて美味。
アオリイカは、さっきまで生きていた新鮮なものを両目から包丁を入れて最大限甘さを引き出してあります。
10年ものの山葵、能登島の塩、スダチと。14代永楽の器で。

●本鰹
度肝を抜かれた鰹です。まるで大トロのようにとろける口溶けで、皮目ギリギリがとにかく甘くて旨い。

●鰆 藁焼き
能登町鵜川「日の出大敷」中田洋助さんの鰆。特大です。

自然栽培の藁で藁焼にして。

冬らしくみぞれ仕立てにして、土佐酢にて。食感に弾力を感じると美味しい脂が湧き出すような鰆です。
田端志音さんの「雪笹」にて。

●鯖鮨
酢飯よりも鯖の層の方が厚い鯖鮨です。この鯖も能登町鵜川「日の出大敷」中田洋助さんの鯖。こちらも思わず目尻が下がる、惚れ惚れする美味しさでした。

●香箱ガニあんだし
香箱ガニは美しい仕事が光る身出しで、ほこほこ温かい香箱ガニの濃厚な出汁あんがけにするという、ありそうでなかった食べさせ方で。

●八寸
冬の八寸。川嶋大将が早朝に能登を回って仕入れに行く時の景色をジオラマにしてあります。この日は気温はマイナス1度で、うっすら霜がかかっていたそうです。
朝どれの水菜・のと115・自家製の干し柿のおひたし、万願寺とうがらしおかか和えと鰹角煮、サザエ麹漬け岩海苔和え、里芋親芋の唐揚げ、新大正餅米の飯蒸しズワイガニと海鼠腸
川嶋さんの八寸は小さい一つ一つがちゃんと美味しくて、食感や調理法も様々だし、熱々の料理も織り込んでいるのでメリハリがあります。

●目鯛フライ
8キロという目鯛を自家製パン粉でフライにしてあります。目鯛の美味しさはもちろんですが、驚いたのは自家製のウスターソースです。色が淡い“薄ターソース”。実はこれ、お店で使う野菜の端材を使用したもので、サスティナブルな取り組みの一つなのです。
そして、このアンバー色からは想像できなかった、びっくりするような豊かな旨味と複雑味が素晴らしかった。

●かぶら蒸し
今朝畑で抜いてきたばかりの蕪のかぶら蒸しは、天然の甘さが最大限感じられます。春菊、甘鯛、ナメコと。

●お食事
ご飯は中能登の無農薬棚田米を営業時間前直前に精米し、能登島「陶房独歩炎」藤井さんの土鍋で炊いたもの。土鍋の蓋の重さが通常2倍ほどあり、しっかり圧力がかかります。水は中島の藤瀬霊水。

今回の汁は冬にふわさしく粕汁。8種の食材からの旨味と粕汁が溶け合い、ポタージュのようにとろとろで、まろやかでぽってりと温めてくれます。

おかわりはなんとズワイガニ。身と蟹味噌を甲羅に入れて炭火で温め、たっぷりとご飯にかけてくれました。

さらに、鰹の漬けと粘り気の強い城山自然薯のコンビネーションで。

●そばブランマンジェ
中能登町の新そばと能登ミルクを使用したブランマンジェ。七尾で採れたイチゴ“さがほのか”と。

●能登栗きんとん
秋から熟成させた、糖度28くらいある能登栗をきんとんに。砂糖は加えてありませんが、甘さに厚みがあり、しっかりと奥深い。

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