訪問日

2020

08/27

「一本杉 川嶋」夏:月とスッポン、鰹藁焼、新蓮根

最初に出してくれたのは、さっぱりとした紫蘇ジュースと凍ったおしぼり。夕刻でも外に出ると汗が止まらない気温の日。おしぼりは軽く凍らせてあって、肌に押し付けると暑さが飛び、キーンとクールダウンし心が落ち着きました。

もう一品、トマトの蜜煮を頂いていると、川嶋大将が料理の準備を目の前で始めます。

前菜が出たところでパッと照明を明るくしてくれて、食べ手としてのスイッチもオンに。
暗から明への演出も川嶋大将のセンスが感じられます。

●前菜
大トロ茄子の揚げ煮、朝どれキュウリのカリカリキュウリ、天然鯛の昆布締め、輝く出汁ジュレがけ。
あんがとう農園の大トロ茄子は、その響きのイメージ通りのとろんとした口どけと甘さ。キュウリのカリカリがいいリズムを刻む。夏らしい前菜で幕開け。

●無花果
永楽の器で中能登無花果の胡麻かけ、オクラおひたしのせ。ねり胡麻に、煎りたて擦りたての胡麻を加えて鮮烈な香ばしさをさらに加える。このねっとり香ばしい胡麻が、無花果の糖度と滋味にぴったり来ます。

●お吸い物 タイトル「月とすっぽん」
椀種は真薯かと思いきや、これは玉子豆腐にスッポンを入れた“スッポン豆腐”。
“亀は万年”の縁起良さに開業の思いを込めて。
スッポンは中能登で捕れた天然で、甲羅が45cmもあるもの。肉とコラーゲン質の部位をゴロゴロ入れ、食感の違いも味わいどころ。今回はスッポンに合わせて、一番出汁にスッポン出汁も合わせたそうです。まろみがあることはもちろん、美味しいお出汁の中でも、とても透明感あって濁りのない味に感じられました。美味。青みにはツルムラサキ。

●お造り 七尾のヒラメ、赤イカ
柑橘は酢橘ではなく早生の蜜柑。愛媛で作られている農家さんが七尾出身なのだそうです。
山葵は広島。京都大阪の修行時代から馴染みのあるということでお使いということですが、なるほど絶品。クリーミーと聞いて食べたら本当にクリーミーで、辛味よりもだいぶクリーミーさが前に出ていました。塩は能登島。醤油は一本杉の「鳥居醤油」を使った土佐醤油。

●お造り カツオのタタキ自家製ポン酢で
たたきは太白の胡麻油少し塗って、店舗を模してデザインした箱型の可愛らしい燻製箱で藁焼きに。夏に能登島で行われる“向田の火祭り”は「日本三大火祭り」のひとつにも数えられますが、そのときに使う藁で藁焼きに。藁の懐かしみある風味がのってうまいのなんって。鳥居さん醤油に酢橘を加えた自家製ポン酢で頂きます。

●お凌ぎ
ふぐの親子丼。レアなふぐのたたきが美味。石川県の珍味フグの卵巣漬けをパラパラとかけてその塩気で頂きます。飯蒸しには黒枝豆入りで芳しい風味にそそられます。

●八寸
小さい一つ一つにもこだわりを置く、丹念に仕込んでいることが伝わる八寸が素晴らしいです。
宝船にはトマトのおひたし、タコやわらか煮、ブルーベリーの白和え、赤ズイキ甘エビ出汁煮含め、茗荷の酢漬け、新生姜の酢漬け、スッポンの白子と肝、蓮根の刺身。サザエの器には、サザエの麹漬けと万願寺とうがらし磯海苔佃煮和え。
蓮根の刺身は、ここ1週間から10日くらいのみ食べられて、梨のような風味でみずみずしい。

●揚げ物 蓮根、小芋
蓮根と小芋の唐揚げ。蓮根は縦にかじると極細の糸を引きます。刺身蓮根とはまた顔の違う蓮根。
里芋の子はキメ細かく柔らかく、煮含めてから揚げているので、揚げの香ばしさに品のある旨味が余韻し美味。

●蓮根餅お焼き、能登鰻の白揚げ 葛あんかけ
蓮根を使った料理が3品意図的に続きますが、全て食感や味わいをガラリと変えてあり良かった。蓮根餅お焼きは、ほちゃほちゃとろんとしていて香ばしく、その中に食感も加えてあります。
能登鰻の白揚げは蒲焼きや白焼きと違った美味しさを教えてくれた。外カリッ中ふわっと、素朴なおいしさが押し寄せて来ます。

●お食事
ご飯は、能登島の無農薬棚田米を営業時間前ギリギリに精米。精米仕立ての米を、能登島「陶房独歩炎」藤井さんの土鍋で炊き上げます。土鍋の蓋の重さが通常2倍ほどあり、しっかり圧力がかかります。水は藤瀬霊水。

「そんなの美味しいに決まっているじゃないか!」って、本当に美味しい。光り輝く炊きたての艶が眩しい。特徴的なのは透明感のあるうまさで、どれだけでも食べられそう。
ご飯は欲張りに4段階で頂きました。
まずはそのまま。香の物(キュウリ糠漬け、金糸瓜、ちりめんじゃこ)と赤出汁(中島のキクラゲ)を頂きながら。

お次は、能登牛A5プレミアムの時雨煮を少しのせて。
さらに烏骨鶏の卵黄でたまごかけご飯に。これはテンションあがる。この卵黄がねっとり濃厚で格別でした。
最後にはお焦げは、出汁をかけて香ばしさをお出汁に移して。茶懐石の“湯桶”のような感じで。さっぱりしているのにふくらみのある味わい。

●フルーツ
食べ頃の中能登の桃をラムネジュレがけで。建物に懐かしみがあるので、そのレトロなイメージでラムネジュレで。

●お抹茶、和菓子

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