冬の王様、本ズワイガニと香箱ガニ、13.9キロもある氷見鰤が共演するという、主役揃いの贅沢な回でしたが、その珠玉食材を活かし切り、そのポテンシャル以上の美味しさに昇華させているところが藤井大将の凄いところです。それができるのは限られた料理人だけだと思っています。
鰤は、なんとこの日の朝揚がったばかりの13.9kgという超大物の氷見鰤を1本準備してくれました。これはすごい!堂々たる存在感です。
目の前で捌いてくれるプレゼンテーションも素晴らしいものでした。
これは経験値と技術力、自信がなければできない実演です。見惚れるほど美しい鮮やかで手際良い解体ショー。あっという間に柵になり、中トロ・大トロ、砂ずりの部位ごとに柵分けされました。これを食べ比べできるというのは、どれだけ有難いことか。
私は海の女なので、個人的には鮮度が高い魚の方が圧倒的に好みです。熟成系はここでなくても食べられる。新鮮なのはここだからこそ食べられるのです。
フレッシュでサクサクとした食感と、跳ね返すような弾力、上質な品の良い脂、この上ない美味しさでした。
新湊で揚がった本ズワイガニは、活を目の前でこちらも固体から捌いてくれて、お刺身、炭火焼き、しゃぶしゃぶ(出汁、蟹味噌)、甲羅酒で頂きました。
ふじ居さん冬の定番、スペシャリテの”甲箱蟹醤油漬け”は、何日もその美味しさに浸れる圧倒的美味しさで、今年も食べられて幸せでした。
(以下、お献立と写真ギャラリー)
●八寸
落花生塩茹で、生麩カマンベールチーズサンド、八尾 高野さんの最中 とんぶり大和芋、姫にんじん味噌漬け、魚津の洋梨、海鼠、じゃこえのき
器は、八尾のShimoo Designさんの作品にて
●蕪蟹しんじょ
藤井大将の吸地大好きです。胃にスッと入ってきて、毒が抜けたように体が軽くなるような美しい吸地。お吸い物は大将そのものを映す鏡のようなもの。心洗われるような美味しさです。
●蟹刺し
今まさに目の前で捌きたてのカニ刺し。みずみずしい甘さにうっとり。
●氷見鰤
前記の通りですが、目の前で実演解体ショー。中トロ・大トロ、砂ずりの3部位の刺身に加え、炭火炙り、しゃぶしゃぶまで出してくれました。究極の贅沢。
●甲箱蟹 醤油漬け
お醤油などの調味料で漬け込んだもので、冬にふじ居さんを訪れるお楽しみの一つ。
味付けのバランスが絶妙で、素材の輪郭をハッキリと出しつつ品のあるおいしさ。ケジャンとは違う、和の美味しさに仕上げているあたりも大将の素晴らしさ。
ピンと粒が立った銀シャリをこのタイミングで出してくれるのも、最高です。
酒泥棒でありご飯泥棒でもある、ふじ居さんの冬の逸品。食べた後は何日もおいしさの余韻に浸ってしまう、記憶に残る一品。
●焼き蟹
藤井大将が手際よく捌き、あっという間に美しく盛り付けられ圧巻です。
炭火焼きは焼き方に特徴あり。水分を含ませた富山産和紙を蟹にかぶせて、さらに追い水を吹きかけて湿らせて焼き上げます。こうすることによって、蒸し焼き状態になり、身から水分が抜けずにふっくら仕上がります。
炭火焼きの香ばしさと蒸し焼きの良いとこどり。
●蟹しゃぶ
しゃぶしゃぶは、身もうまいがエキスが凝縮したスープも美味。しゃぶしゃぶは生と焼きの良いとこどりで、温かでとぅるとぅるの舌触り。ふわぁっと繊細な口溶けです。
●甲羅
お次は蟹味噌をたっぷりと絡めて。程よい塩味と優しいコクを持つ蟹味噌が、しゃぶしゃぶしたカニ身をふわっと包み込みます。
●柿なます
紅白なますに福光のあんぽ柿、胡麻醤油で。お食事前の酢の物ですが、怒涛の王様食材の流れに、良い箸休めにもなりました。こういう一品にも、細部まで手を抜かない大将の丁寧さが感じられました。
●ぶり大根飯
●プラチナアイス
デザートの定番、スペシャリテです。満寿泉の純米大吟醸プラチナの酒粕を使った芳醇な味わいのアイス。