8月で移転後2周年となるふじ居さん、記念すべき10回目の訪問。2ツ星あらためておめでとうございます。
シゴトの精度の高さや格別な美味しさはもちろんのこと、小さな添え物ひとつにも手を抜かない真摯な姿勢、一人一人のお客さんに寄り添う丁寧なお心遣い、そして食べ手に楽しみを与えてくれる演出も考えられているという、素晴らしい大将のお人柄よ。
毎夏ふじ居さんを訪れる楽しみとなっている、地物の鮎や玉蜀黍ご飯も堪能できました。
●長芋羹 雲丹
七夕の短冊の五色に繋がる陰陽五行説の、青(木)・赤(火)・黄(土)・白(金)・黒(水)を笹に吹き流しのようにして掛け、魔除けとして。
最初の一品から藤井大将の気持ちがこもったしつらえです。
長芋羹に雲丹を添えて。やや食感を残した長芋のシャリシャリも涼しく、程よく効かせた塩気が淡白な味わいに輪郭を持たせます。
●鱧 冬瓜 順才
この時期ふじ居さんに登場するお椀は、浅縹色のテッセンの蒔絵が美しい輪島塗。絵の合わせ方も、見返しも素晴らしいのです。鱧に合わせた吸地も秀逸。
●毛蟹 はす芋
輪島の毛蟹をさっぱりと橙酢のゼリーで。
●お造り 新湊キジハタ、ナメラ 珠洲の天然塩
●冷麦
夏のふじ居さんで食べられるのが楽しみな一品、笹切の冷麦です。
京都のご修行先だった大将のご実家がおそば屋さんで、毎夏はそちらの笹切りがお献立に。
笹の葉を粉末状にしたものを練り込んであり、風流な香りがふぅと鼻腔を抜けてから、ちゅるんと滑る麺が喉の奥へリレーしていく。野趣も美味。
●八寸
八尾「下尾デザイン」さんの、一枚板から丁寧に削った木の器に盛り込んだ夏らしい八寸。
新湊のサザエ味噌和え、富山県産茄子を白身魚と八丁味噌をブレンドした魚味噌で茄子田楽に、すり身と卵のカステラ、富山上市町の枝豆、富山県産 万願寺とうがらしジャコ炒め、うなキュウ、越中八尾の高野さんの最中たたいたオクラと梅肉。
●神通川天然鮎
今しがたまで泳いでいたピチピチ元気の良い活鮎を炭火焼に。
笹の下にはほうじ茶葉と炭が入っていて、もくもくと煙を立ち昇らせながら登場。軽くいぶして風味づけとなります。
頭から尻尾までいけるのがいい。調理しても分かる天然鮎らしい野性的な形相です。タデ酢は発酵を効かせてあるので重厚で、この塩焼きにぴったりです。
●あわびずいき
新湊の鮑、白ズイキ
●吉川茄子
福井鯖江の伝統野菜の一つ吉川茄子は、丸茄子の原種とも言われています。揚げてからお湯を潜らせて油抜きし、昆布と鰹にお塩のみで味付けしたお出汁で。繊維がとてもきめ細かくシルキーで、身が詰まっており味がしっかりしており美味。
●玉蜀黍ごはん
待ってましたの毎夏の楽しみ。中川一辺陶さんの土鍋にて。御飯鍋の蓋を外すとパッと美しい向日葵色が目に飛び込んできて、玉蜀黍の甘い太陽の香りが鼻腔をくすぐる。焦げめにも食指が動く。ああ、食べる前からもう美味しい。
プツプツ弾けてぴゅっと飛び出す甘いエキス、絶妙な塩気が次の一口を急がせます。
お土産にも頂きました。翌朝の楽しみに。
●プラチナアイス
ふじ居さんの定番のデザート。満寿泉プラチナの酒粕で作ったアイスクリームはとっても芳醇でインパクトあり。
●水羊羹
生産数が限られる希少な能登大納言を使用した水羊羹です。口に入れるとまずは能登大納言のとっても華やかな風味に驚きます。ひんやりした口当たりを感じてすぐ口の中でスッと消えるような繊細さで、コースの締めくくりを夢心地に浸らせてくれました。